和食が食べたい

アメリカ生活やインターンの話

和食が食べたい

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異国のスーパーで試食販売をすることになりました

主な仕事は商品の配送と在庫管理ですが、僕の会社のインターンは、週に1回ほどスーパーでの試食販売に駆り出されます。一人で。

 

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「ラーメン試食しませんか~?」

 

 

週一でこんなことしてます。恥ずかしいです。

 

 

「試食販売って、スーパーの店員さんか試食販売専門のバイトの人がやるんじゃないの?」って思いますよね?

 

確かにアメリカも日本も、ほとんどの試食販売はスーパーの店員さんがやっているでしょう。しかし食品会社の社員がわざわざスーパーまで出向いて、自社製品の試食販売をするケースもあります。

どうしてそんな方針を取る会社があるのでしょうか?

 

 

理由はアメリカ人って食にめちゃめちゃ厳しいからです。サンフランシスコ周辺だけかもしれませんが、このあたりに住んでいる人たちは食事に気を遣う人が非常に多いのです。

 

「アメリカ人ってみんなハンバーガーとか体に悪そうなのばかり食べて、ブクブクに太ってるんじゃないの?」って最初は思っていました。それも間違いではないです。日本ではなかなか見られないフィジカルの方々もたくさんいます。

 

しかし逆に、「砂糖一切取りません!」「ベジタリアンです!」「オーガニックのものしか食べません!」という人もたくさんいます。そうです二極化しているのです

 

そしてスーパーで買い物をするような人は圧倒的に後者が多いです(スーパーによりますが)。食に厳しい人は食事のできるレストランも限られていて、自分で信頼できる食材を買って料理をする機会が多いからでしょう。

 

そんな彼らに試食させるのは簡単ではありません。原産地はどこか、~~が入っていないかなどの細かい質問に正確に答え、彼らの条件を満たさないと試食してもらえません。パッケージに書いてある原材料も事細かにチェックされます。

したがって、特定の商品に関してあまり詳しくないスーパーの店員さんに試食販売をさせるよりも、実際に働いている社員を試食販売に送り込む方が効果的なのです。

 

 このような環境なので、このあたりの食品会社は健康的な食品ですよという公的な認証を得るのに必死です。その認証がないと買わないという人が多いですからね。僕の会社は長年商品開発に力を費やして、いくつかの認証を得るのに成功したので、厳しい奥様方の条件をクリアできる自信はあります。

しかし会社の商品は、競合のたくさんいるアジア系のスープや麺です。西海岸を中心に数多く展開している2つの大手スーパーに商品を置かせてもらっていますが、スーパーに来る約95%のお客さんは僕たちの会社のことを知りません。

 

少しでも多くの人に会社の商品を認知してもらう。これを目標に、僕たちの会社は地道に試食販売を続けています。

 

 

正直に言いましょう。僕はこの仕事が本当に嫌です。無視されることも多々ありますし、お客さんが全然いなくて退屈な時間も結構ありますからね。

まあ試食販売している人を見て「面白そう!やってみたい!!」って思う人はほとんどいないでしょうし、「楽しすぎる!」と思いながら試食販売をやっている人もほとんどいないでしょう。

 

しかし普通の人が経験できないようなことを経験していることは事実です。異国のスーパーでラーメン配ったことある日本人大学生なんてそうそういないでしょう。

そんな謎に包まれた異国の地での試食販売。もちろん試食販売員の数だけ試食販売のやり方があるので、これが試食販売のすべてというわけではないのですが、僕の数十回にわたる異国での試食販売の経験から試食販売って具体的に何をしているのか、ご紹介しましょう。(試食販売試食販売うるさいですね。ごめんなさい。)

 

 

まず一日のスケジュールはどんな感じなのか。

 

10:00: スーパー到着。ストアマネージャーとお話し。

10:15: 準備開始。どこからかお水を頂いて沸騰させる。同時にスープを温める。

10:30: ラーメンを豪快に茹でて、試食販売開始。

1:00:   試食販売終了。どこかで鍋を洗ってスーパーを去る。

3:00:   二件目のスーパー到着。以下同じ流れ。

 

基本こんな感じのスケジュールです。

 

まず最初にストアマネージャーと何を話しているのかというと、商品がどこに置かれているか、ちゃんと置かれているか、十分な数の商品が棚に置かれているか、裏の冷凍庫に在庫があるかなどを確認します。

 

ここで今日の試食販売がうまくいきそうか大体わかります。ストアマネージャーの良し悪しがそこで働く店員さん、お客さんの入りの良し悪しに直結しています。店員さんが明るくて、試食販売のサポートを徹底的にしてくれて、お客さんの入りも良いスーパーのストアマネージャーは決まって良い人です。

 

とあるスーパーでは、ストアマネージャーがスタバのコーヒー片手に1時間遅刻してきた上に、賞味期限切れの商品を棚に置かれていて、一言も謝ることなく「下のやつが悪い」と文句を垂れ流されるということもありました。まあこんな人が上に立っている組織では下の人も付いてこないでしょうし、お客さんも入らないですよね。

 

こんなスーパーもたまにあるので、自分たちの商品がお客さんの手にしっかり届く環境が作られているかの確認も試食販売の仕事に含まれているのです。

お店で働いている人の雰囲気が、置かれている食材の良し悪しに繋がっているのだと痛感しました。自分が通い詰めるスーパー選びも慎重に行った方がいいですね。

 

 

そんな話し合いが終わった後はテーブルをセットして準備を始めるのですが、ここで面白いなって思うのが、準備中なのにお客さんがぞろぞろ寄ってくるんですね

 

日本人はなにか違うことをしている人がいると遠目で「何か変なことしてるなー」ってチラ見するだけの人が多いと思いますが、こちらの人はそういう人を見ると「何をしているんだ?」どぞろぞろ寄ってきます。

例えば、ラーメンを鍋からざるに載せて豪快にバサッと水を切ると、目撃した人は「なんだなんだ!?」と寄ってきます。試食販売中は派手な動きなどなく、配っているだけなので、準備している時が一番お客さんが勝手に寄ってくるのです。

 

では試食販売中の地味な時間帯はどうすればお客さんを呼び寄せられるのか。

たまに見かける、「ラーメンいかかですか~~?」と叫んで注目を浴びる方法もありますが、恥ずかしいですし、個人的にあまり効果的でないと思うので実践していません。

 

数か月の試食販売経験で効果的だなと思ったのが、近くに来たお客さんをテーブルの前に少しでも長い時間立ち止まらせることです。試食するしないに関わらずです。

 

先ほども述べた通り、こちらの人は何か違和感がある光景を見ると「なんだなんだ!?」と寄ってきて、違和感の正体を掴もうとします。

試食販売中は、大きな声を出して注目させるより、自分の周りに少しでも多くの人を立ち止まらせる光景を作ることで違和感を作り出すのが効果的だと気が付きました。見慣れないテーブルの周りに数人だけでも人が立っていたら「なんだなんだ!?」と自分も寄りたくなりますからねこちらの人は。

 

その点、食べ物に厳しい奥様方はありがたいです。立ち止まって色々と質問をしてくれるので。違和感を作り出すのを手伝ってくれます。食べ物の話に関係なくても立ち止まらせるだけで効果的です。(この前はNHKの話で盛り上がりました)

 

 

ということで、もし急に異国で試食販売をすることになってしまった!という方々にアドバイスを送るなら、

  1. 派手な動きで注目を集める
  2. 自分の周りに人を立ち止まらせて注目を集める

ですね。これで多くの人に商品を試食させて知名度を上げることができます。

 

「そんな機会ないよ!」という方々、僕も異国で試食販売をするなんて夢にも思っていませんでした。「そんなことも将来するかもしれない」って思っておいて頭の片隅に入れておくのも損ではないでしょう。このアドバイスが将来誰かの役に立てたら幸いです。

 

 

最後にこの心の底から嫌な仕事ですが、本当に英語のスピーキングとリスニングの勉強になります。色々な国籍、年齢の人と話しますからね。しかも立ち止まらせる作戦のために食事に関係ない話もするので。

 

この記事見ると、「この人英語でストアマネージャーと色々お話したり、色々なお客さん相手に商品の詳しい説明したり、食事に関係ない話して引き留めようとしたりすごいな」と思ってしまうかもしれませんが、全然すごくないです。まだ全然英語でスラスラ会話できてないです。

 

何度も聞き返したり、質問と全く関係ないことを答えたり、適当にYESと答えてしまったり...。何回もしかめっ面をされました。一番屈辱を感じる仕事だから心の底から嫌なのです。

しかしお話する人のほとんどが二度と会うことのない人でしょうし、そんな小さな会話のミスだなんて相手はすぐに忘れてしまうでしょうし、何も気にすることはないのでしょう。

 

アメリカに来て3か月半、自分としては英語が伸びている実感が全くないのですが、日本でほしがっていた、意地でも英語を話さなくては環境にいるのは間違いないです。

 

アメリカ生活も折り返し。 頑張ろう!