和食が食べたい

アメリカ生活やインターンの話

和食が食べたい

アメリカ生活やインターンの話

最強の会話ネタ

ついに恐れていた質問をされてしまいました。

 

「なんで甘いもの食べれないの?」

 

そうです。僕は甘いものが嫌いなのです。厳密に言うと「甘すぎるもの」、例えばアイスクリームやチョコレート、バニラなどなど。大半の人間が好きな食べ物なので、信じられないといった感じで質問してきます。

この質問をされるたびに「またか...」と思ってしまうのですが、確かに僕が大好きな寿司が大っ嫌いですと言う日本人がいたら「なんで!?」って聞いてしまうでしょう。しかし、その食べ物が嫌いな理由なんて「味が気に入らないから」に尽きてしまうのです。

 

嫌いな食べ物トークってよく挙げられるナスとかパセリだったら、「味が気に入らない」といえば「ああ...まあそういう人よくいるよね」で終わるのですが、甘いものの味が気に入らないと言ってしまうとさらに「なんで!?」と聞かれてしまうのです。

 

味が気に入らない理由を聞かれても...。しかも僕のことをそれなりに知ってる人は、

「おまえイチゴ食べてたやん」

とも言ってきます。イチゴのところは人によって様々な単語が入ってきます。一般的に甘いといわれているもののすべてを嫌っているわけではありません。

ソフトクリームは食べられないけどガリガリ君は食べられる。ケーキは食べられないけどフルーツは食べられる。ココアは飲めないけど牛乳は飲める。

 

この境界線を説明しろと言われても自分でもよくわからなくて、とりあえず

「フルーツとはなんかスカッとしてるじゃん?味が。クリームとかチョコとかは甘ったるいうえに、食べた後も口の中に味がドロって残る感じが嫌なんだよね...」

と自分でもよくわからない返答をしています。見た目とかのイメージで食わず嫌いになってる食べ物もあるんだろうけど...

 

まあ一度も納得してもらったことはなくて、最後に一番言われる一言が、

「人生の○割損してるよ!」

です。○に入る数字で一番大きかったのは「9」ですが、人生の9割が甘いものに支配されてしまうような人生でなくて本当によかったと思います。

 

 

個人的な話が長くなりましたが話を戻すと、この日本語でも説明が難しい質問をされてしまったのです。

こちらに来て思ったのですが、色々な国籍の人たちがいる環境では「食べ物」って会話のテーマにも相手を理解するのにも最強のツールなんです。食品会社ということもあり、食べ物の話題は毎日のように出てきます。

会社での昼食は基本誰かが持ってきた食事を分け合うか、みんなで色々なレストランに出陣するかのどちらかですが、なぜか自国の食事は全力でディスってやろうという風潮があります。

ベトナム人のインターンベトナム料理屋に連れて行って「このフォーはクソだ!」と言わせる、シンガポールは中国と関係が深いのでシンガポール人と中華料理屋に行くと「この小籠包はクソだ!」と言う。そして「本当のフォーはもっと...」「本当の小籠包はもっと....」と熱く語りだす。そんな風潮が周りの人たちにあり、それをみんなで楽しんでいます。

僕はその風潮に気づかず、インターン初日に連れていかれたラーメン屋さんで、微妙だったけど「おいしい!」って言ってしまいました。気を遣って嘘をついてしまう日本人の悪い習性ですね。次にお寿司屋さんへ連れていかれたときには全力でディスってやろうと思います。

 

また少し話がずれてしまいましたが、何が言いたかったかといいますと、こちらの人たちは自国の食事に限らず食べ物の正直な感想をものすごく求めてきます

「これベトナムで有名な○○って食べ物だよ。家から持ってきたからちょっと食べてみてよ!」と渡され、食べた後は「どうだった?」と感想を求められる。毎日のように色々な国籍の人たちからの「これ食べてみてよ」が繰り広げられます。

 

 そんな環境なので自分が恐れていた質問が投げられるのは時間の問題でした。ある日社員が「ケーキをもらってきたよ~」と言いながらオフィスに入ってきて、部屋の真ん中の大きなテーブルに、テーブルを埋め尽くすほど大きなケーキが広げられました。

弊社は仕事中だろうが、オフィスの中で何を食べてもOKなのです。自分の中でハッカーと呼んでいるシンガポール人のインターンは一日中ポテチをほおばりながらパソコンと向き合っています。

若い人たちばかりの会社なので、部屋の真ん中にケーキが出てきたらまあ群がる群がる...。そんな中で一人だけデスクで微動だにせずパソコンと向き合っていたらまあ目立ちます。

 

「食べないの?」

 

ああ、聞かれてしまった...。

 

「うん。甘いもの好きじゃないんだ。」

 

その直後、日本ではお目にかかれなかったリアクションとともに記事の一番最初に書いてある質問をされてしまいました。

さあ日本の友達に聞かれたような流れで質問が来るぞ。英語でどうやって説明しよう...と考えてましたが、大げさなリアクション以外にも「甘いもの好きじゃないんだ」に対するその後の反応が日本で経験したものと少し違っていたので面白かったです。

 

まず意地でも食べさせようとしてくる

 

日本人以上に甘いものが食べられないのが信じられないというのもあると思いますが、食べ物の意見は目の前にあるものを食べてから言えという感じで迫ってきます。

日本では食べ物の感想で「おいしくないです」と言うことは失礼にあたるという風潮がありますが、こちらではおそらく食べずに「嫌い」と否定するほうが失礼にあたるのだと思います。

食文化というものはその国自身を表す一つのプロフィールで、その食べ物を体験していないのに否定することはその国自身をイメージだけで否定する「偏見」と変わらないじゃないか、そんな考えが根付いているのかなって思いました。毎日昼食を一緒に重ね、周りの人たちの会話や反応を観察していると、食べ物を食べたうえで「これは自分には合わないな」と意見するのは決してネガティブなものでないと気づきました。

 

例えば食べてみてといわれて渡されたものの見た目がすごくマズそうだった。ここで断ったら偏見になってしまうので、頑張って食べてみたら味は見た目ほど悪くはないけどものすごく辛かったとき。このようなシチュエーションで今までは「少し辛いけどおいしい」と無難に答えていたと思います。

しかしこちらで正直な意見を求められているという風潮を悟った後は、「辛すぎて自分には合わないかな。日本は辛い食べ物より醤油や味噌みたいに塩っぽいものが好まれて、自分もそのようなものをたくさん食べてきて育ったから合わないのだと思う」みたいに答えるようになりました。「せっかくくれたのにごめんね」という気持ちに包まれますが、それに続いて「私の国は~」みたいに話がつながっていき、最終的にはお互いの国の食文化の情報が共有できていました。

嘘ついて「おいしいです」と言ってしまうのは、相手に嫌な思いをさせないためにというのが目的なのに、正直な意見を言ってみてもお互い満足して会話が終わった。なんだか狐につままれたような感覚に陥りました。

 

 

話が何度も脱線しましたが、一口でいいから食べてみろというプレッシャーに負けほんの少し食べてみましたが、案の定受け付けない味でした。ゆっくり咀嚼しながら「無理っす」という表情を全力で作り、本当にケーキがダメということを理解してもらいました。

その次にされた質問は予想通りでした。

 

「いやおまえぷっちょ食べてたじゃん!」

 

ぷっちょ」とはあのお菓子のぷっちょです。日本の有名なお菓子ですが、こちらでも2件だけ売っているお店を見つけたので、たくさん補充しては仕事中に頬張り、周りの人たちに餌付けしています。ぷっちょを知っている人は会社にいなかったのですが、僕が会社に輸出して餌付けするともう絶賛の嵐。みんなぷっちょを見せるとあからさまにテンションが上がります。

 

そんなぷっちょも甘いものじゃないかという反論をいただき、ここからどう説明しようと悩みましたが、

ぷっちょはsweatだけど、ケーキはtoo sweatだ」

で最後まで押し切りました。

 

 

自分の嫌いな食べ物の話でこんなに長くなるとは思いませんでした。何が言いたかったかというと、留学する前に自分の国の食事について詳しく知っておいたほうがいいですよってことです。現地の人たちとの会話で必ずでてくる話題だからです。国籍の違う人たちと距離を縮めるテーマを考えたとき、スポーツや政治などは種目や知識に左右されがちですが、「食」は誰しもが毎日対面しているものなので何かしらの意見を誰もが持っています。会話のテーマとして最も適切ではないでしょうか。

僕みたいに「味噌が余ったから本物の味のmiso soupを作ってくれよ!」と突然言われることもあるかもしれないので、料理の勉強をしておくことをおススメします。

 

あとぷっちょをあげたら信頼を勝ち取れます。日本からたくさん持っていきましょう。